【雑誌掲載記事】映像情報メディア学会誌vol.70 no.2

地質学応用における画像の取得と画像処理技術

(映像情報メディア学会誌3月号「一般社団法人 映像情報メディア学会2016年3月発行」:地質学応用における画像の取得と画像処理技術)
※ 本記事は、一般社団法人 映像情報メディア学会の承認のもと転載しています。

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現在,人工衛星,航空機,UAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人航空機),地上機器などのさまざまなプラットフォームにより目的に応じたデータの取得が可能となっている.データは太陽光,電磁波,レーザーなどを媒介して取得されるが,最も利用されることの多いレーザーを用いたLiDAR計測と電磁波を用いた合成開口レーダー衛星による地質学応用について紹介する.

1.まえがき

地質学への映像・画像技術の応用を考えるとき,植生被覆のほとんどない海外であれば航空写真のみからでも多くの情報を得ることができるが,厚い植生に被覆されている我が国では地形情報が何よりも重要となる.現在では,さまざまなプラットフォームにより目的に応じたデータの取得が可能となっており,人工衛星,航空機,UAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人航空機),地上機器などを活用できる.
地質学への応用という点から技術的なトピックスを考える上でポイントとなるのは,以下の4点であろう.
(1)地質学では地表の点データをつなぎ合わせて空間的な広がりを持たせるために,地上でも水面下でも地表面の地形データが必須である.これには簡単にDTM(Digital Terrain Model:数値地形モデル)データを作れるようになったレーザーなどの技術は大変重要である.
(2)平成23年の東北地方太平洋沖地震による被災地のような南北500 km以上に及ぶ広域災害の状況把握や海洋上の孤島,また火山活動などにより航空機での対応が難しい場合や夜間の場合でも人工衛星により多くの情報を得ることができる.また,人工衛星ではさまざまな現象の推移などを継続的に追跡・監視することが可能である.
(3)直接アタックするには危険であったり,難しかったりするなどの斜面や対象物など限定的な範囲または用途であれば,無人航空機や地上機器からでも容易に対応できる.
(4)地質学応用としては,一度DTMなどのディジタルデータとして取得しておけば複数回の計測によって,地表面の変位を継続的に追跡し得る.

本稿では航空機によるレーザー計測(LiDAR: Light Detection and Ranging)と,人工衛星,特に合成開口レーダー(SAR: Synthetic Aperture Radar)についての地質学への応用について解説する.また,資源探査に関する内容は除き,地質学応用という観点から我が国に非常に多い斜面変動,火山活動を題材に解説する.

2.LiDAR

2.1 LiDARとは

レーザー光を地表などに照射し,照射点までの距離を基にGPS,IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)を用いて,照射点の座標などのデータを得ることをLiDARシステムによる計測と呼び,ただ単にLiDARと略称することもある.欧米では1990年代に商用化された技術であるが,国土地理院によって標準仕様が制定されたのは2004年〜2006年になってからである.レーザーによる計測機を搭載するのは人工衛星,航空機,自動車,地上固定型,UAVなどである.地上部に用いるレーザー光には近赤外線の波長700〜1600 nm程度のものが使われ,河川や海などの水部にはグリーンレーザー(波長495〜570 nm)が使われる.例えば,航空機からであれば,地表1 m2あたり数点以上照射できる機器能力があり,平らな地表であれば,おおよそ数10 cm程度の円形に近い形の大きさでレーザーが連続的に照射される.レーザーの最大照射回数は200〜500 kHzに及ぶが,もちろん安全性が確保されるレーザーの照射強度である.


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