当社は国土や企業経営の基盤となる空間情報を人工衛星・航空機・専用車両などで正確・精密に計測するとともに収集したデータを解析・加工し空間情報サービスへと展開をしている。
道路空間上のデータ計測においては、道路を走行しながら3次元レーザ点群と連続映像を高精度・高密度に取得できるMMS(モービル・マッピング・システム)を使用し、高精度な数値図化データを作成している。
この仕組みは自動車の先進運転や自動走行を支援するために必要な高精度な道路地図の整備にも適用可能で、当社では車載のカメラやレーダーを補完するための高精度で小容量な道路DBの開発に取り組んでいる。
MMSと取得データ
MMS は前方および後方に向けた上下2段のレーザスキャナ(2~4台)と、デジタルカメラ(2~ 6台)を用いて、「3D点群データ」と「デジタル画像」を取得する。これと連携しGNSS 受信機(3 台)・IMU・オドメトリの複合解析による高精度な測位/ 位置・姿勢を正確に計算、FKP(面補正パラメータ)方式によるGNSS補正をかけることで、道路面と道路周辺の3次元空間を相対精度で1cm、絶対精度は衛星可視区間で、平面位置精度:10cm、高さ精度:15cmの高精度でのデータ取得が可能なシステムである。
高精度道路DB
「高精度道路DB」は、以下の2点を目的として、MMSにより取得した軌跡や画像、点群データから作成する。
- カメラやレーダーで検知できない、車両走行前方の高精度な道路形状を情報を車両に提供できる。
- カメラやレーダーと照合することで、GNSS の精度が悪くても自車位置特定ができる。(区画線で横方向、標識で縦方向の位置合わせ)
これによって、ブレーキ制御やレーンキープ、エコ運転支援など自動車の様々なアプリケーションの性能が高まることが期待される。
標準的なデータ整備項目は、
- 道路外側(区画)線
- 道路(車線)中心線
- 道路幅員
- 縦横断勾配
- 信号・標識点、停止線
とし、先読み可能なネットワーク構造を形成し、曲率近似等で変化点のみを残すデータ容量削減化を図っている。
当社は、既にMMS で計測した直轄国道(約2 万km)と高速自動車道(約9 千km)のデータ(軌跡、画像、点群)をアーカイブ化しており、メーカーの要望に応じて上記以外の道路構造物もアーカイブデータから図化作成でき、自動走行等の研究開発で必要な様々な地物を再計測なしに追加図化することができる。
また、アーカイブデータは、GNSS の捕捉状況によって絶対精度が劣る個所(高層ビル街、トンネル等)が存在するが、相対精度(自車位置と各地物位置関係)は確保されているため、GCP ※を設置し後処理で幾何補正することで再計測せずに絶対精度を向上させることも可能である。
※ GCP とはGround Control Pointの略で、現地測量等により位置補正を行うためのMMS で認識できる道路空間上の位置
国家目標の自動走行システムの実現・段階的な導入に向け、先読み情報として必要な地図情報も同期し整備する必要がある。段階的で効率的なデータ整備ができ、持続可能な運用の仕組みの構築に当社の技術が貢献できれば幸いである。