【雑誌掲載記事】土木学会誌 第101巻 第3号

他分野の知見を専門分野に盛り込む
─電気工学出身の広域・精密測量のプロ─

(土木学会誌3月号「公益社団法人土木学会2016年3月発行」:いいね!土木 ─スゴ腕土木人へのインタビュー)
※ 本記事は、公益社団法人土木学会の承認のもと転載しています。

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[語り手]三島 研二氏 (株)パスコ 研究開発本部兼技術統括本部 技師長
[聞き手]神谷 啓太 学生編集委員
2015年10月27日(火)パスコ本社 にて

土木を、世の中を縁の下で支える「スゴ腕土木人」へのインタビュー。
今回は、精密測量の第一人者、三島研二さんに話を伺った。粒子加速器や天文台など、科学の実験装置や施設を高精度かつ広範囲に設置する際には、地球の曲率を考慮した高度な精密測量技術が必要になる。三島さんは±0・1㎜の精度を実現させ、国内の多くの主要な粒子加速器や、山梨リニア実験線のガイドウェイの設置などに携わってきた。

測量技術のデジタル化で電気技術者が求められた

──ご専門の分野と、いまのお仕事を選んだ理由を教えてください。
三島──専門は測量、なかでも精密分野に特化した測地を手掛けています。入社した1980年前後は、ちょうどアナログの測量からレーザーやコンピュータが導入されるようになった「はしり」の時期でした。学生時代にはまだ計算尺を使っていましたからね。やがてGPSも登場し、技術の進歩に合わせて測量方法も大きく変わっていく節目だったと思います。
最初の仕事は、メコメーターという光波測距儀を使って地殻変動や大型土木構造物の変動量を計測するものでした。メコメーターは±0・2㎜の測定精度を持つ高精度な機械ながら、温度によって変化する周波数を補正するため、オシロスコープも同時に使用する必要がありました。こうした計測は従来の測量技術の範疇ではないということで、私のような電子工学出身者が採用されたわけです。私自身もコンピュータ関係に進むより、電気系の人材が少ない測量の世界のほうが重宝がられるのではないかと考えて、この道を選びました。

ノーベル賞の実験を支えた加速器の測量とアライメント

──最近は、どのようなお仕事に取り組んでいますか。
三島──粒子加速器の「サーベイ& アライメント」と呼ばれる分野、つまり電磁石などを精度よく並べていく仕事が中心です。国内最大の衝突型加速器「KEKB(文部科学省高エネルギー加速器研究機構のBファクトリー)」や、茨城県東海村にある世界最大強度の陽子加速器「J -PARC」など、国内の主要な粒子加速器の設置に携わってきました。電子や陽子などの粒子を光速近くまで加速させるためには、加速器の機器類を±0・2㎜の高精度で設置する必要があります。アライメント誤差があると、粒子ビームが加速の途中で発散して消滅してしまうからです。


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