【雑誌掲載記事】月刊「測量」2017年3月号
2016年 日本写真測量学会 学会賞 受賞論文

都市空間の緑景観評価のための立体緑視率の研究

(月刊「測量」2017年3月号「公益社団法人 日本測量協会2017年3月発行」:テクニカルレポート)
※ 本記事は、公益社団法人 日本測量協会の承認のもと転載しています。

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1.はじめに

現代の都市空間は超高層ビルの建設に伴って垂直方向に拡大しており,都市の緑に関しても屋上緑化や壁面緑化の割合が増えています。緑は都市に住む人々にうるおいと安らぎを与える貴重な環境資源であり,その維持には定期的な調査による緑量把握が必要です。都市空間の緑量調査方法として一般的な緑被率は地域面積に占める草木面積の割合を示すものであり,上空から垂直撮影された空中写真等を基に計測された草木面積比です。しかし最近の緑量調査では,壁面緑化等の人々の視覚に入りやすい緑を評価することができない緑被率よりも,人間の視野に占める草木の割合を示す緑視率調査の重要性が徐々に高まっています。例えば大阪府は緑視率による緑量評価を推進しており,独自に調査マニュアルを整備しています。
緑視率は景観写真を基に草木の割合を計測するため,都市空間全体の緑量評価指標とするためには,あらゆる場所で撮影された景観写真が必要となります。したがって,緑視率調査は景観写真を撮影できる特定の場所の緑量をピンポイント的にモニタリングするために用いられてきました。そこで本研究は,空中写真を基にした緑被率調査によって得られた緑被ポリゴンデータと既往のGISデータを使って緑視率を計測する手法を開発し,緑視率を都市空間全体の緑量評価指標に拡張しました。本稿は実際の調査で整備された緑被ポリゴンデータ等による実例を基に開発手法の概要をご紹介します。

2.対象領域

東京都渋谷区は空中写真を基にした緑被率調査とともに区内の33交差点において緑視率調査を実施しました(2013年実施)。本研究は渋谷区による調査成果を活用させていただき,図-1に示す場所を対象に検討しました。

図-1 調査の対象領域(2013年の渋谷区調査成果を基に作成)
図-1 調査の対象領域(2013年の渋谷区調査成果を基に作成)

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