【雑誌掲載記事】「新都市」平成29年8月号

空間データに立脚した都市インフラの
統合的なマネジメント

(「新都市」平成29年8月号「公益社団法人 都市計画協会2017年8月発行」:特集 産業としてのまちづくり)
※ 本記事は、公益社団法人都市計画協会の承認のもと転載しています。

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1.はじめに

地方公共団体の都市インフラ(公共施設及び土木インフラ)は、高度経済成長期に集中的に整備され、先進国としての我が国の高度な経済活動と国民の生活水準を支えてきた。しかし、その都市インフラは老朽化が急速に進行しており、少子高齢化や人口減少の進行と共にインフラの維持管理が困難になると、我が国の経済活動と国民の生活水準が維持できなくなってしまうのではないか、という懸念がある。
一方、今後の地方公共団体におけるまちづくりは、人口減少・少子高齢化、都市の低密度化などの避けて通ることができない都市課題に対し、コンパクト・プラス・ネットワークや立地適正化計画制度といった都市計画施策と、公共施設の再編や土木インフラの再生といった、都市インフラのマネジメント施策との整合を図ることによって「目指すべき都市像」を明確に描き、実現に向けた取組を講じる必要があると考える。
本稿では、都市計画などの空間データと都市インフラ情報をGIS(地理情報システム)で分析し、これらのデータに立脚した都市インフラマネジメントの検討手法を紹介するとともに、今後、小規模な市町村が管理する都市インフラの維持管理業務を、民間事業者が一括して担うような新たな産業創出の可能性について論じたい。

2.空間データに立脚したまちづくり

図 未利用土地資産を自動抽出した例
図 未利用土地資産を自動抽出した例

各種都市計画や都市インフラは、すべて文字数値データと、点・線・面の図形で構成される空間データで表現することができる。これらのデータをコンピュータ上で「重ねがけ」し、視覚化することによって、合意形成や意思決定者を支援するツールがGIS(地理情報システム)である。もっとも身近なGISは、カーナビゲーション・システムやインターネット地図サービスがあげられる。
地方公共団体における都市インフラの老朽化対策の取組は、平成28 年度末までに国のインフラ長寿命化基本計画に基づく行動計画(公共施設等総合管理計画)の策定が98.1%の団体で完了したことから、今後は、平成32年度までに公共施設(ハコモノ)道路、橋りょう、河川、公園、上下水道など、分野ごとに個別施設計画を策定し、点検、診断、補修・修繕といったメンテナンスサイクルを実施する段階へと移行し始めている。
そこで課題となるのが、都市インフラに係るデータ整備とその活用である。都市インフラに係るデータとは、公共施設(ハコモノ)道路、橋りょう、河川、公園、上下水道などの施設の諸元や、修繕工事履歴情報などの「ストック情報」、施設に係る光熱水費や維持費等の「コスト情報」、利用者数や交通量など施設が提供する住民サービス供給量の「サービス情報」、施設の位置、地域の人口や都市計画用途地域、立地適正化計画の誘導区域、ハザードマップなどの「空間データ」である。
これらのデータは、最終的にはすべての情報をデジタル化し、GISで各種分析等に活用できるようにすることが望ましいが、データ整備に係るコストの縮減が課題となる。そこで、庁内にあるデジタルデータを活用して、まずは簡便にスモールスタートさせることが考えられる。
例えば、地方公共団体で整備されている公有財産台帳と、税務部門が管理する固定資産税台帳の地番図データや航空写真データなどの空間データがあれば、GISで重ねがけすることによって、公有財産台帳に存在していない未利用の土地・建物資産を自動抽出し、簡単に発見することができ、資産の売却や有効活用につなげることができる。


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