PLATEAUのはじめかた

PLATEAUのはじめかた

今回の記事は、PLATEAUスタートアップの準備として、最初に取り組むべきことや注意すべきポイントをステップごとに紹介します。あわせて、各段階でみなさまに確認・決定・調整していただきたい事項の簡易的なチェックリストをご用意しました。どうぞご活用ください。

大都市の3Dモデルについて話し合うビジネスミーティング
01

はじめる前の準備は念入りに

ステップは5つあります。ここから順を追ってご説明します。

STEP.1 導入の目的を明確化する

はじめに、PLATEAUを導入する目的を明確にします。
3D都市モデルを活かして何を実現したいのか。解決したい課題とは何か。この段階で、3D都市モデルを活用したユースケースを具体的に検討し、目的や内容をはっきりと定めておきましょう。

既存のユースケースがお手本です。

その際、参考になるのがこれまで開発されてきた数々のユースケースです。地域社会が抱えるさまざまな課題を解決したり、より高度な都市計画へ導いたりといった活用実例は、きっと貴重なお手本になるはず。国土交通省のサイトで公開しているほか、パスコでも自社開発した事例を紹介しています。
オープンデータ化を基本とするPLATEAUでは、他地域での課題解決策をシェアすることができるのが特徴。さらには、既存のユースケースを基に改良・応用したローカライズでの導入も可能です。くわしくはパスコにお問い合わせください。

○国土交通省PLATEAUサイト ユースケース紹介ページ
○都市空間情報デジタル基盤構築支援事業(PLATEAU補助制度)取組事例集(2022年度)
○都市空間情報デジタル基盤構築支援事業(PLATEAU補助制度)取組事例集(2023年度)

これまで開発されてきた数々のユースケース

様々なユースケース

【チェックリスト】確認・決定・調整が必要です。

ユースケース分野の決定
主な分野
〇 都市計画・まちづくり
〇 防災・防犯
〇 地域活性化・観光・コンテンツ
〇 環境・エネルギー
〇 交通・物流・モビリティ・ロボティクス
〇 住民参加
〇 その他
具体的なユースケース内容の決定
アウトプットのイメージ(計画や事業の反映など)の決定

STEP.2 3D都市モデルの作成範囲を定める

設定したユースケースに応じて、3D都市モデルの整備エリアや面積のほか、対象とする地物やLOD(詳細度)など、データの仕様を決定します。

必要なLODは目的によって異なります。

地理空間情報では、地図上に表示されるすべてのものを「地物」といいます。山・河川などの自然物や建物・道路などの人工物、まちの境界線やバスルートなど目に見えないものも含まれます。この地物を記述する際の詳細さの度合いがLOD(Level of Detail)です。
建築物でいえば0から4までの5段階ですが、これは決して見た目の細かさや美しさを意味するだけではありません。情報の質・量が異なっているため、ユースケースの内容・目的に応じてあらかじめ必要なLODを決定しておく必要があります。

LODの概念

LODの概念
○国土交通省「3D都市モデルの導入ガイダンス(第4.0版)」をもとにパスコにて作成

たとえば、都市全域の広範な都市構造シミュレーションを実施する場合は、いわゆる「箱型」のLOD1で十分な場合が多いです。しかし、太陽光発電の導入促進をめざした施策を検討する場合、そのシミュレーションを実行するためには、屋根の形状や面積、傾き、方位などの詳細な情報が不可欠なため、それらを有するLOD2が必要となるのです。

LOD1を使用したシミュレーション例

LOD1を使用したシミュレーション例
○出典:国土交通省 PLATEAUサイト内 TOPIC01「3D都市モデルでできること」
https://www.mlit.go.jp/plateau/learning/tpc01-2/

LOD2を使用したシミュレーション例

LOD2を使用したシミュレーション例
○出典:国土交通省 PLATEAUサイト内「uc21-001 太陽光発電のポテンシャル推計及び反射シミュレーション」
https://www.mlit.go.jp/plateau/use-case/uc21-001/

ただし、LODが高ければいいかというと、必ずしもそうではありません。高度なつくりこみが増えるぶん、工期やコストの増大につながりますし、データ容量が肥大化してハンドリングしにくくなることもありますので要注意です。
このLOD決定の際も、前項同様、既存のユースケースを参照していただくことをおすすめします。

【チェックリスト】確認・決定・調整が必要です。

3D都市モデルの整備エリア・面積の決定
例)LOD1:都市計画区域(XX㎢)、LOD2:XXX駅前エリア(XX㎢)
整備対象とする地物とLODの決定
例)建築物LOD1、LOD2/道路LOD1、LOD2/都市計画決定情報LOD1/土地利用LOD1
災害リスク(洪水X箇所・津波・土砂災害)LOD1
都市設備LOD1、LOD2/植生LOD1、LOD2/地形LOD1

STEP.3 必要なデータを確認する

3D都市モデルの整備、ユースケース開発に必要なデータの所在を確認します。

基本データ3点は多くの場合、庁内で保有しています。

3D都市モデル整備に欠かせない基本データは以下の3つです。
 ①都市計画基本図(基盤地図情報)
 ②都市計画基礎調査
 ③公共測量成果(航空写真またはレーザープロファイラ)
いずれも、定期的に収集・作成されているデータを活用することが可能なので、まず所在の確認をしてください。

3D都市モデル作成イメージ

3D都市モデル作成イメージ
○国土交通省「3D都市モデルの導入ガイダンス(第4.0版)」をもとにパスコにて作成

ユースケースにあわせて多様なデータが必要です。

ユースケース開発に際してはこの3つに加え、内容・目的によって追加で必要となるデータが変わってきます。
たとえば……
■災害リスクの可視化
[必要なデータ]○避難所等情報 ○防災施設情報 ○人口分布 ○地震被害想定結果 ○人流データ(メッシュ型流動人口データ) など
■火災延焼シミュレーション
[必要なデータ]○気象統計データ ○事業計画データ(道路拡幅、公園設置、生産緑地変更、建物不燃化など) ○想定出火位置データ ○想定地震データ など
と、多岐多様。ユースケースにあわせて何のデータが必要か、それはどうやって取得するのかなど、さまざまな項目をひとつひとつクリアしていく必要があります。

【チェックリスト】確認・決定・調整が必要です。

3D都市モデルの整備に必要なデータの取得状況の確認
航空写真撮影成果、都市計画基本図、都市計画基礎調査、災害関連情報など
ユースケースに必要なデータの取得状況の確認

STEP.4 データ公開に向けた確認を行う

PLATEAUでは、作成した3D都市モデルやユースケースを広く公開する必要があります。ですが、基本データの整備方法の違いから自治体によって取扱いが異なる場合も多いようです。オープンデータ化に関する自治体の方針確認や、公開データと非公開データを適切に区分するなどの検討を行う必要があります。

【チェックリスト】確認・決定・調整が必要です。

オープンデータ化に関する自治体の方針の確認
オープンデータ化できない情報の有無の確認

STEP.5 データ整備とユースケース開発の各事業者を決める

ここまでの流れについて確認・決定できたら、次は3D都市モデルを整備する事業者、ユースケース開発を行う事業者を選定します。

ワンストップ対応の業者がおすすめです。

いずれも高度な技術や知見が欠かせないため、それぞれを専門で請け負う企業も多いですが、可能であれば両者を同じ事業者に依頼することおすすめします。PLATEAUは、庁内各部署はもちろん外部の委託先も含め、幅広い分野の大勢の方々が関わる事業です。円滑かつ効率的に進めるためには、スムーズな意思疎通と機敏な対応力、そしてすぐれたワンストップなサービスをお選びいただくといいでしょう。

データやグラフを使ったビジネスプレゼンテーション中の様子

【チェックリスト】確認・決定・調整が必要です。

3D都市モデル整備事業者の決定
ユースケース開発事業者の決定

ご覧いただいたように、事業実施の準備段階だけでもたくさんの確認・決定・調整事項が控えています。「まだまだわからないことも多いし」と、少々不安になられた方もいらっしゃるかもしれません。
どうぞご安心ください。3D都市モデル整備とユースケース開発、いずれにも確かなノウハウと豊富な実績を積み重ねてきたパスコがきめ細やかにサポートします。ぜひお気軽にご相談ください。

02

3D都市モデルのイメージ想起も大切

前項で3D都市モデルの地物の詳細度であるLODについてふれましたが、PLATEAUではその目的・内容に応じて描かれるモデルの美しさや精緻さ、多彩さも大きな魅力のひとつ。見た目でパッとわかりやすい、説得力がある、情報共有を促し共通理解が進む、などの3D都市モデルのメリットも、その魅力があってこそです。

目的に応じたさまざまな表現が可能な3D都市モデル

目的に応じたさまざまな表現が可能な3D都市モデル

繰り返しになりますが、3D都市モデルを整備すること自体が目的ではなく、それを課題解決や新しい価値の創出に役立てることが重要です。とはいえ、そこで描かれる3D都市モデルをしっかりイメージしておくことは、プロジェクトの目標や着地点を全員できちんと共有するうえでとても意義あることだと考えます。
そこでここでは、PLATEAUで整備する3D都市モデルのさまざまな表情をご紹介します。ご自身の自治体でのユースケース開発に臨み、その最終形をイメージされる際の参考にしてみてください。

LODによる3D都市モデルイメージの違い

PLATEAUでは都市空間をさらに網羅すべく、3D都市モデルの作成対象となる地物の拡充を進め、2024年現在では20の地物を規定し、それぞれにLODを設定しています。
以下にいくつかの地物とそのLODを例示します。

3D都市モデルの各地物の詳細度(LOD)ごとのイメージ

3D都市モデルの各地物の詳細度(LOD)ごとのイメージ
○国土交通省「3D都市モデル標準作業手順書(第4.0版)」をもとにパスコにて作成

これらLODの違いを実際に3D都市モデルに落とし込んだものが、次の4点です。
LOD1は、建物の図形に高さ情報を加えた箱型モデルです。ただし、高さの中央値を利用することから、低層部と高層部があるこの建物では高さが正確に再現されていません。
LOD2では、屋根形状を詳細に表現できていますが、玄関や窓など側面の開口部は描かれていません。
LOD3になると、側面の開口部の情報が加わることで、よりリアルな建物となりました。
LOD4では、床や壁、階段など建物内部の情報が付与され、屋内外のシームレスなモデル化まで可能になります。

LOD1

LOD1

LOD2

LOD2

LOD3

LOD3

LOD4

LOD4

○出典:国土交通省「3D都市モデルのユースケース開発マニュアル(第4.0版)」

活用目的に応じて表現手法もさまざま

3D都市モデルは、その活用目的や描写対象によって最適な表現手法をとって描かれます。
たとえば、道路。形状や幅員、接続状況だけが必要であればLOD1で十分ですが、道路拡幅による生活環境や街並み景観の整備を企画する場合は、道路と歩道の段差まで表現できるLOD3が必要です。

LOD1の例

LOD1の例
○PLATEAU VIEW 3.0より

LOD3 + 都市施設、植生の例

LOD3 + 都市施設、植生の例
○PLATEAU VIEW 3.0より

都市計画決定情報や都市計画基礎調査のデータをもとに、さまざまな切り口で情報をビジュアル化。より高度なまちづくり施策に活かすことも可能です。

用途地域の作成例

用途地域の作成例
○PLATEAU VIEW 3.0より

用途地域の色分け
土地利用情報の作成例

土地利用情報の作成例
○PLATEAU VIEW 3.0より

土地利用情報の色分け
用途地域の作成例

用途地域の作成例
○PLATEAU VIEW 3.0より

用途地域の色分け
土地利用情報の作成例

土地利用情報の作成例
○PLATEAU VIEW 3.0より

土地利用情報の色分け

また、自治体が所有している災害関連情報をPLATEAU仕様に重ね合わせることで、災害リスクを可視化して防災・減災施策に活用。防災意識の啓発も促し、安全安心なまちづくりに貢献できます。

土砂災害リスク情報の作成例

土砂災害リスク情報の作成例
○PLATEAU VIEW 3.0より

津波浸水リスク情報の作成例

津波浸水リスク情報の作成例
○PLATEAU VIEW 3.0より

浸水深区分

さらには、アイレベルでのリアリティあふれる街並みを再現できるのも3D都市モデルならではの利点です。LOD3以上の都市設備や植栽が描き出す精緻な3D空間はまさしく広大な創造空間。地域活性化のための観光ガイドアプリや住民参加型のまちづくり活動の支援など、アイデア次第で活用のフィールドはますます広がります。

LOD3.1で描いた遊歩道

LOD3.1で描いた遊歩道
○PLATEAU VIEW 3.0より

LOD3の植生

LOD3の植生
○PLATEAU VIEW 3.0より

(ただし、LOD3の都市施設や植生の作成では、走行車両によるMMS(モービルマッピングシステム)などでの詳細な計測データでモデル化する必要があります。)


今回はPLATEAUのはじめかたと題して、導入に向けた準備段階についてご案内しました。「何からはじめればいいのかまったくわからない」という方へも、道筋をお伝えできたのではないでしょうか。
ですが、まだまだお伝えしたいこと、知っていただきたいことがたくさんあります。PLATEAU導入を支援する国の補助金制度について。導入以上に大きな意味をもってくる継続・更新に対する考え方について。今後も引き続きさまざまなお役立ち情報をお届けしていきます。


「地域の方々の誰もがいきいきと過ごせる、豊かなまちにしたい」
「災害に強く安全安心な暮らしをお届けしたい」
「まちづくりDXを進めて、活力にあふれた未来をつくりたい」
そうしたみなさまの想いをどうぞお聞かせください。
その想いの実現を、私たちパスコがお手伝いできれば幸いです。

ノートパソコンで作業を進めている笑顔のスーツ姿の男性

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