CIMに必要な地形モデルと最新計測技術の紹介
調査計画フェーズにおいて、これまでの設計では主に2次元図面上で設計方針を整理し、設計計画を立案してきたが、CIMでは3次元地形モデル上での設計計画を行うことによって、設計の制約条件である地形や交差施設などの空間的な問題点が早期に明確化され、結果的に設計ミスの防止につながると考えられる。ここでは、計画に使用する3次元地形モデルの作成に関する最新計測技術を紹介する。
3次元地形モデルは、利用フェーズによって、データの密度や位置精度が比較的粗くてもいい概略設計用モデルと、高密度・高精度を要求される予備設計・詳細設計用モデルとに分けられる。
概略設計に用いる3次元地形モデルは、航空測量平面図(縮尺1/2500 ~ 1/5000平面図)に相当する地形モデルとして、国土地理院が提供する数値地図(国土基本情報:5m標高メッシュ)から容易に作成、調達することができる。しかしながら、一部の山間地において未整備の地区が存在したり、データ整備の年次が古いなどの課題がある。
これらの課題を克服する新計測技術として、オブリークカメラ(新型航空カメラ)による写真測量が脚光を浴びている。この手法では、1回の撮影で複数の斜め方向の写真画像を同時に取得し、より詳細な地形モデルを短時間で作成することができる(図1)。
図1 従来の撮影カメラとオブリークカメラで作成した地形モデルの比較
実測が必要な予備設計・詳細設計に用いる地形モデルの作成においては、予備設計の要求精度に対応する計測技術として、地上設置型および車両搭載型レーザースキャナー計測等がある。さらに、詳細設計の要求精度を補完する新計測技術として、UAV(無人飛行機)計測が注目されている。UAVのカメラ画像から画像マッチングにより生成する3次元地形モデルは、2~3㎝メッシュに相当する詳細なデータ(1000点/㎡)の取得が可能である(図2)。
図2 左:UAV計測機材と計測風景、右:UAV画像から作成した地形モデル
UAVによるカメラ計測は、すでに災害支援として活用されているが、橋梁点検などインフラ老朽化の点検手法としても実用化が進んでおり、CIMの維持管理フェーズでの利用も有望視されている。
CIMプラットフォーム ─地形モデルを活用した設計計画システム─
BIM、CIMによる世界的な建設革命を受け、ソフトウェアも飛躍的に進化している。
CIMプラットフォームは、調査計画をはじめ、設計・施工・維持管理までの情報を一元的にアクセスできる3次元インターフェイスや、座標によって各データを重ね合わせ、属性を保持できる機能が必要である。事業の進捗に合わせ最適なモデルを格納・管理し、必要な情報を加工抽出する機能や、追加で取り込める機能が求められる。
CIMプラットフォームとして国内外で活用されている「Autodesk InfraWorks」は、数値地図(国土基本情報)やWebサービスの地理院タイルから動的に画像を取り込むことができ、データ整備地域であれば概略設計レベルで必要な3次元地形モデルを一時間程度で作成できる。より詳細な情報が必要な対象地域に対しては、前述のオブリークカメラで作成した地形モデルや、レーザースキャナー計測、カメラ画像からの3次元モデル、構造物や建築のBIMモデルなどを統合していくことが可能である(図3)。
図3 オブリークカメラやレーザースキャナー、UAV画像等により取得された3次元データを周辺地形に重ね合わせたイメージ
図4 スケッチするように簡単に3次元上で検討
3次元現況地形モデル上に検討したい道路や橋を線として作図するだけで、設計条件を考慮しながら、切り盛りや橋脚が自動配置され、簡単に3次元上で計画検討できる(図4)。
周辺環境を意識しながら多数の案を多くの関係者と共有でき、その結果、最善の計画をより少ないリスクで意思決定できる。詳細設計や施工段階で追加される、より精度の高い情報を重ねたり、関連付けたりしていくことで、一元的なCIM建設情報データベースとして、より進化・深化させることができる。
維持管理においても、各種台帳などの既存システムと親和性を保ちながら、今までとまったく異なる新しい発想、すなわち種別・管理主体によるバラバラな管理ではなく、社会インフラ全体を面的に管理することで、アセットマネジメントによる最適化された計画的なインフラ管理が期待される。